社員が語る 越後みそ西への想い

私たちが作っているのは
その先にある「家庭文化、食文化」だと
思っているんです

Interview

専務取締役 杤堀 佳倫

杤堀さんは「越後みそ西」の過去から綿々とあるものの「あとを継ぐ」ことに向き合ってらっしゃいますが、何を受け継ぎたいと思っていますか?
少し傲慢な言い方になるかもしれませんが、「柏崎の誇りとなるような会社になりたい」と思っているんです。いろいろなものでその土地のアイデンティティって作られていくものだと思うのですが、それらが合わさって、地元というものに愛着を持ったり、そこに生まれたことを誇りに思えたり、外に出て行ったとしても、帰ってくる場所があると感じられたり、そういうものの中に、例えば「食」というものがあって。
それって実は当たり前にあるものではなくて、続けていくには力が要ると思うんです。ここ数年、市内でも老舗と呼ばれるようなお店がなくなってしまい、やっぱり経営者の高齢化はしているし、後継者がいなければ立ち消えてしまう。例えば、お蕎麦屋さんとかラーメン屋さんとか、「昔からあそこで出前を取っていて食べていたのが思い出にあるのよ」っていうところがなくなってしまうのは、すごく寂しいなと思います。実際自分の近所でもそういうお世話になっていたお店がなくなってしまうのを見るときに、やっぱり残していかなければいけないものってあるなと。
私に照らし合わせてみれば、それが味噌だったりみそ漬であって、それを残すことで地元の方が、親戚やお知り合いに「地元の物」として持って行っていただけたりするのは、すごくありがたいことだと思います。それで「美味しい」と言っていただければ、その贈った方も嬉しいと思っていただけるだろうし。そういう風にやっぱり、当たり前にあるものを、当たり前にこれからも残していくためには、今頑張らなければいけないんだなと思っています。
杤堀さんにとって、「味噌」はどんな存在ですか?
ひとつは、「家庭文化」ですね。おふくろの味っていう言い方もされると思うんですけど。私たちが作っているのは、味噌です、みそ漬です、醤油です。でも、その先にあるのは、それを使って料理をしてくださるお母さんだったり、おばあちゃんだったり、それを使ってくださる方がいて。そこには食卓があって、その食を囲んで食べるっていう空間とひとときがあって。だから味噌を作っているんだけど、私たちが作っているのは、私自身は、その先にある「家庭文化、食文化」だと思っているんです。もちろん、どんな味噌を使おうがこだわらないという方もいらっしゃるとは思います。ただ、「お宅の味噌が欠かせないのよ」なんて声をかけられると、やっぱり責任を感じますよね(笑)。お料理屋さんで使っていただいている場合も、それは家庭とはいわないかもしれないけれど、お料理の基本となる味なので、やっぱりそこは変えられない。その土台の上にそのお店の味が成り立っているわけですから。料理人さんのつくる調和のとれた味の中にこの味噌があると思うと、背筋が伸びる気がします。

もう一つは、「風土」。味噌は、その土地の気候や土地に住んでいる微生物によっても味が左右されます。その中で育まれてきた時間も合わさって、今ある味噌の味になります。
私は土地が育むという表現をしますが、その場所でゆっくりと熟成する時間があるからこそ、味噌には土地の記憶さえ含まれているように感じています。
前身で『フードタカラ』というお店がありました。今までこのお店の名前を深く考えたこともなかったのですが、フードって風土かって(笑)。なんでタカラって名前にしたんだろうと思った時に、風土が宝なんだと、先代がいっているような気がしたんです。勝手な解釈なんですが、なんとなく腑に落ちたんですよね。
日本にはまだたくさんの味噌蔵がありますが、年々数は減ってきています。
でも、その一つ一つがその土地の風土や食文化を伝えているので、できれば小さい蔵でも残っていってほしいと思っています。そして100年後、その地域の味噌を日本酒のように地域ならではの特色として、全世界で親しまれる日本食にしていけるよう、私たちもこの地から発信をし続けていきたいと思います。


Interview:ブリコール
2017.08 越後みそ西新道工場の事務所にて